AIの誕生
機械式計算機や真空管式コンピュータ「ENIAC」の登場と共に、「人間の知能を持つ機械」の研究が始まりました。
この頃にディープラーニングの基本となる「ニューロンをシミュレートする」という考え方も生まれました。
そして、1956年に開かれた「人間の知能を持つ機械」の技術発表会「ダートマス会議」において、ジョン・マッカーシーがAI(人工知能)という言葉を使ったことが最初だと言われています。
1956年~ 春の時代(第1回ブーム)
当時のスーパーコンピュータの性能は、2019年現在において10万円以下で購入出来るPCの1000~10000分の1以下でした。
それでも、単なる計算機でしかなかったものから、少しだけですが知的なことが出来る様になったことは、当時の人々によって驚異的だったようで、政府機関がこの分野に積極的に投資するようになり、研究もどんどん進みました。
1974年~ 冬の時代
AIの研究は盛んになりましたが、その期待に応えることが出来なかったため、投資は縮小されていきました。
その背景には、やはりコンピュータの性能が低かったという問題があります。
当時21億円の世界最速スーパーコンピュータ Cray-1であっても、数値演算性能0.13GFlops、搭載メモリ8MB程度という性能でしかなく、私が会社から貸与されているビジネスPC (Panasonic Let’sNote SZ Core-i5 7300U)は 14.7GFlops メモリ 8GBなので、実に演算速度で百倍、メモリ容量で百万倍の性能差があります。
1980年~ 春の時代(第2回ブーム)
AI研究の一環として、人間の専門家(エキスパート)の意思決定能力をエミュレートするというコンピュータシステムが生まれました。
それまでは研究でしかなかったAIの技術が初めて実用化段階を迎え、世界中の企業で採用されるようになりました。
エキスパートシステムは特定領域の専門家から意思決定するためのルールを聞き取り、それをエキスパートシステムに登録するという作業が必要になります。
そしてそれは、専門家の知識量やルールの聞き取りやシステムへの登録のどこか1つでも間違えれば、エキスパートシステムは正しい答えを返さないという事を意味します。
また、企業の変革に合わせてエキスパートシステムのルールを変更する必要があり、維持コストが掛かりすぎるなどの問題も表面化し、やがて世の中の期待に応えきれなくなりました。
1987年~ 冬の時代
エキスパートシステムの終息と共に、AIへの投資も下火になり、2回目の冬の時代を迎えます。
1991年、日本では通産省主導で「第五世代コンピュータ」の開発が国家プロジェクトとして進められています。
第五世代コンピュータの目標は「述語論理による推論を高速実行する並列推論マシンとそのオペレーティングシステムを構築する」というものでした。述語理論は聞きなれない言葉ですが、数学で使われる記号をそのままプログラミング言語として記述することで、コンピュータに推論させるという意味のようです。
この国家プロジェクトは、10年と570億円をかけたにもかかわらず、成果がビジネスに活かされることがありませんでした。
強力な推論エンジンを持つコンピュータは出来上がったようですが、それを生かすAIソフトウェアが存在しなかったため、日本のメーカーはこれを採用しなかったため、事実上失敗プロジェクトとして認識されています。
80年代の末頃から、人工知能が知性を獲得するには「体」が必要だという考えが登場しました。
それは、人間は外界からの知覚や人や物との関わりから学び成長するという過程が必要だからで、人間と同様の感覚や運動機能がAIの成長には不可欠であるという考えに基づいています。
1989年~ 春の気配を感じる時代
冬の時代もAIの研究は継続されていました。
AIは、その活用の場を小さな領域に限定し、それぞれの分野に特化した形で進化を遂げていきます。
例えば、アメリカのカーネギー・メロン大学の研究チームが開発した「ALVINN」という自動車は、車載カメラと機械学習(ニューラルネットワーク)を用いて全行程4587Kmの98%を自動運転するという快挙を成し遂げています。
1997年にはチェスプログラム「DeepBlue」が人間のチャンピオンを打ち負かしており、1999年頃には、WWWの収集情報をAIで処理するという事も始まりました。
2006年~ 春の時代(第3回ブーム)
この年にコンピュータ科学および認知心理学の研究者であるジェフリー・ヒントンが、ディープラーニングの技術を発明しました。
2011年にはIBMの人工知能「ワトソン」がクイズ番組で勝利し、翌年の2012年には、ディープラーニングを用いたGoogleのAIが猫の認識に成功、世界各地から注目を集めました。
これまでの方法だと、人間が猫を識別するための情報、例えば形、色、ヒゲの形、目の形など、識別するための特長を数値データとしてAI(この場合は機械学習)に与える必要がありました。
GoogleのAIは、何万枚もに猫の写真と、猫以外の写真をAIに与えることで、猫か否かを判断する特徴を勝手に見つけて識別してくれるという点が異なっています。
2016年にはGoogleのAI「Google AlphaGo」が囲碁の名人に勝つことで、改めてAIの凄さが世の中に浸透しました。
2017年~ ビジネス活用の本格化
IBMやGoogle、Microsofuto等の大手IT企業が、商用ベースで人工知能の構築・活用が出来るサービスを展開しており、それを受けて様々な企業が、自社製品に組み込んで差別化を図ったり、一般の人でも簡単に利用できるよう簡素化したパッケージ製品を販売したりと、ビジネスでのAI活用の敷居は低くなってきました。
数年前から、AI技術を企業に導入するためのコンサルタント業務や、人材育成、あるいはAIを使って企業の課題解決を図るなどを専門としたベンチャー企業が急増しており、また大手企業も他社との差別化を図ったり、品質向上やコストダウン、アフターサービス充実などの目的で積極的にAIに取り組むなど、第3回ブームは今までにない広がりを見せています。